「おわびをさせてください」加藤被告、背筋を伸ばして謝罪(産経新聞)
【秋葉原17人殺傷 初公判】(1)
《なぜ見知らぬ17人を無差別に殺傷しなければならなかったのか−。東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた加藤智大被告(27)の初公判が28日午前10時、東京地裁で始まった》
《青森県有数の進学校を卒業後に上京し、その後は派遣社員などで生計を立てつつ、社会に対する鬱屈(うっくつ)した不満をネットに書き込んできた加藤被告。犯行予告をネットに書き込んだ上での大量無差別殺人は社会を震撼(しんかん)させ、派遣社員についての論議も巻き起こした》
《裁判の最大の争点は、加藤被告の責任能力の有無だ。起訴前の精神鑑定の結果から、「完全責任能力があった」とする検察側に対し、弁護側は加藤被告が「事件当時のことはあまり覚えていない」などと話していることから、鑑定結果には信用性がないとして、証拠採用に同意しなかった》
《弁護側が遺族や被害者の供述調書など検察側の証拠の多くを不同意としたことから、公判では遺族や被害者、精神鑑定医ら関係者計42人の証人尋問が予定されている。証人尋問や被告人質問を通じて、検察側、弁護側双方が法廷内で激しいやりとりを展開させることは必至だ》
《もっとも、加藤被告は事件後、死亡した7人の遺族と負傷者10人、現場で加藤被告を取り押さえた警察官1人に対し、事件を起こしたことについて謝罪の手紙を書いていた。手紙には「罪は万死に値する。当然死刑になると考えます」などと記されていたという。事件への反省を深める加藤被告は、法廷で何を語るのかについても注目が集まっている》
《公判が行われるのは、東京地裁で最も大きい104号法廷。午前9時59分、地裁職員が「傍聴人、すべて入廷いたしました」と報告の声をあげた》
《法廷正面には、すでに村山浩昭裁判長と男女2人の裁判官が座り、加藤被告の入廷を待っている。今回は裁判員裁判ではないため、裁判官の両脇は空席となっている》
《ほどなくして、加藤被告が向かって左側の扉から姿を現した》
《黒っぽいスーツに白いワイシャツ姿。髪の毛は短く刈り込まれ、角刈りのような状態になっている。細い黒縁の眼鏡を掛けた顔は、やせて骨張っている。手にはなにやら白い紙を持っている。法廷内に数歩進み、傍聴席に近づいたところで、傍聴席の遺族や被害者らが座っている付近に向かい、背筋を伸ばした状態から、腰を曲げ、落ち着いた様子で一礼。その後、弁護人の前の長いすに腰を下ろした》
《加藤被告が席に着くと、加藤被告の後ろに座っている弁護人は、なにやら加藤被告に耳打ちした。軽くうなずく加藤被告》
《ここで、村山裁判長が声を発した。午前10時ちょうど。開廷のようだ》
裁判長「それでは開廷します。被告は証言台の前に立ってください」
《村山裁判長に促され、加藤被告は証言台の前に歩み寄った》
裁判長「名前を教えてください」
被告「加藤智大です」
裁判長「生年月日は?」
被告「昭和57年9月28日です」
《人定質問に、背筋を伸ばした姿勢で落ち着いて答えていく加藤被告。質問を終えた村山裁判長は、加藤被告に自席へ戻るよう伝え、続いて検察官に対し、起訴状の読み上げを求めた》
裁判長「それでは、検察官に起訴状を読み上げてもらいます」
《向かって右手に座っていた検察官の1人が立ち上がった》
検察官「それでは読み上げます」
《起訴状によると、加藤被告は平成20年6月8日、東京・秋葉原の交差点にトラックで突っ込み、3人をはねて殺害。さらにダガーナイフで4人を刺殺したほか、10人にけがを負わせたなどとされている》
《検察官は被害者一人一人について、負った傷の状況を克明に説明していく》
《弁護人の前に座る加藤被告は、人定質問を受けていたときと同様、スーツのボタンをしめたまま、背筋をまっすぐ伸ばし、起訴状の読み上げに聞き入っている》
《閉じられたひざの上に、半分に折られた白い紙を置き、その上に手を添えた加藤被告。起訴状の読み上げは10分以上続いたが、その間、時折まばたきをする程度で、ほとんど身動きをしないまま、検察官を見据えていた》
裁判長「では、起訴状を被告に示してください」
《起訴状を読み終えた検察官は、加藤被告のもとに歩み寄り、起訴状を見せていく。検察官がささやく言葉に、軽くうなずく加藤被告。どうやら「はい」「はい」と返事をしているようだ》
《検察官が加藤被告に起訴状を示し終えると、村山裁判長は、加藤被告に対し、証言台の前に立つよう促した。罪状認否を始めるようだ》
裁判長「では、被告は証言台の前に立ってください」
《加藤被告は、ひざの上に置いていた白い紙を持って立ち上がり、証言台の前に立った》
裁判長「今、検察官が読み上げた起訴事実について審理を始めていきます」
《村山裁判長は、黙秘権について説明をした後、認否の確認に移った》
裁判長「検察官が読み上げた、かなりたくさんありましたが、その内容に違っていたところはありますか。また、主張したいことはありますか」
《こう問われた加藤被告は、やおら手に持った白い紙を開き、そこに書かれた文章を読み上げ始めた》
被告「まずは、この場を借りておわびをさせてください」
「亡くなった方、ケガをされた方には、大変申し訳ございませんでした」
「起訴事実については、事件当時の記憶がないところもありますが、私が事件を起こしたことに間違いはありません」
「私の償いは、どうして事件を起こしたのかということを明らかにすることです」
《紙に書かれた文章を落ち着いた様子で読み上げる加藤被告。すべてを読み上げたところで村山裁判長が、認否の確認を行う》
裁判長「起訴事実については、どのようにお考えですか」
被告「私がしたことには間違いありません」
《加藤被告は、きっぱりとこう告げ、自らが犯した犯罪行為について認めた》
=(2)に続く
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《裁判の最大の争点は、加藤被告の責任能力の有無だ。起訴前の精神鑑定の結果から、「完全責任能力があった」とする検察側に対し、弁護側は加藤被告が「事件当時のことはあまり覚えていない」などと話していることから、鑑定結果には信用性がないとして、証拠採用に同意しなかった》
《弁護側が遺族や被害者の供述調書など検察側の証拠の多くを不同意としたことから、公判では遺族や被害者、精神鑑定医ら関係者計42人の証人尋問が予定されている。証人尋問や被告人質問を通じて、検察側、弁護側双方が法廷内で激しいやりとりを展開させることは必至だ》
《もっとも、加藤被告は事件後、死亡した7人の遺族と負傷者10人、現場で加藤被告を取り押さえた警察官1人に対し、事件を起こしたことについて謝罪の手紙を書いていた。手紙には「罪は万死に値する。当然死刑になると考えます」などと記されていたという。事件への反省を深める加藤被告は、法廷で何を語るのかについても注目が集まっている》
《公判が行われるのは、東京地裁で最も大きい104号法廷。午前9時59分、地裁職員が「傍聴人、すべて入廷いたしました」と報告の声をあげた》
《法廷正面には、すでに村山浩昭裁判長と男女2人の裁判官が座り、加藤被告の入廷を待っている。今回は裁判員裁判ではないため、裁判官の両脇は空席となっている》
《ほどなくして、加藤被告が向かって左側の扉から姿を現した》
《黒っぽいスーツに白いワイシャツ姿。髪の毛は短く刈り込まれ、角刈りのような状態になっている。細い黒縁の眼鏡を掛けた顔は、やせて骨張っている。手にはなにやら白い紙を持っている。法廷内に数歩進み、傍聴席に近づいたところで、傍聴席の遺族や被害者らが座っている付近に向かい、背筋を伸ばした状態から、腰を曲げ、落ち着いた様子で一礼。その後、弁護人の前の長いすに腰を下ろした》
《加藤被告が席に着くと、加藤被告の後ろに座っている弁護人は、なにやら加藤被告に耳打ちした。軽くうなずく加藤被告》
《ここで、村山裁判長が声を発した。午前10時ちょうど。開廷のようだ》
裁判長「それでは開廷します。被告は証言台の前に立ってください」
《村山裁判長に促され、加藤被告は証言台の前に歩み寄った》
裁判長「名前を教えてください」
被告「加藤智大です」
裁判長「生年月日は?」
被告「昭和57年9月28日です」
《人定質問に、背筋を伸ばした姿勢で落ち着いて答えていく加藤被告。質問を終えた村山裁判長は、加藤被告に自席へ戻るよう伝え、続いて検察官に対し、起訴状の読み上げを求めた》
裁判長「それでは、検察官に起訴状を読み上げてもらいます」
《向かって右手に座っていた検察官の1人が立ち上がった》
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《起訴状によると、加藤被告は平成20年6月8日、東京・秋葉原の交差点にトラックで突っ込み、3人をはねて殺害。さらにダガーナイフで4人を刺殺したほか、10人にけがを負わせたなどとされている》
《検察官は被害者一人一人について、負った傷の状況を克明に説明していく》
《弁護人の前に座る加藤被告は、人定質問を受けていたときと同様、スーツのボタンをしめたまま、背筋をまっすぐ伸ばし、起訴状の読み上げに聞き入っている》
《閉じられたひざの上に、半分に折られた白い紙を置き、その上に手を添えた加藤被告。起訴状の読み上げは10分以上続いたが、その間、時折まばたきをする程度で、ほとんど身動きをしないまま、検察官を見据えていた》
裁判長「では、起訴状を被告に示してください」
《起訴状を読み終えた検察官は、加藤被告のもとに歩み寄り、起訴状を見せていく。検察官がささやく言葉に、軽くうなずく加藤被告。どうやら「はい」「はい」と返事をしているようだ》
《検察官が加藤被告に起訴状を示し終えると、村山裁判長は、加藤被告に対し、証言台の前に立つよう促した。罪状認否を始めるようだ》
裁判長「では、被告は証言台の前に立ってください」
《加藤被告は、ひざの上に置いていた白い紙を持って立ち上がり、証言台の前に立った》
裁判長「今、検察官が読み上げた起訴事実について審理を始めていきます」
《村山裁判長は、黙秘権について説明をした後、認否の確認に移った》
裁判長「検察官が読み上げた、かなりたくさんありましたが、その内容に違っていたところはありますか。また、主張したいことはありますか」
《こう問われた加藤被告は、やおら手に持った白い紙を開き、そこに書かれた文章を読み上げ始めた》
被告「まずは、この場を借りておわびをさせてください」
「亡くなった方、ケガをされた方には、大変申し訳ございませんでした」
「起訴事実については、事件当時の記憶がないところもありますが、私が事件を起こしたことに間違いはありません」
「私の償いは、どうして事件を起こしたのかということを明らかにすることです」
《紙に書かれた文章を落ち着いた様子で読み上げる加藤被告。すべてを読み上げたところで村山裁判長が、認否の確認を行う》
裁判長「起訴事実については、どのようにお考えですか」
被告「私がしたことには間違いありません」
《加藤被告は、きっぱりとこう告げ、自らが犯した犯罪行為について認めた》
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